営業担当者の心の内・住まい売却編 第2回

こんにちは、佐海です。

買替の場合、売却が長期化すると売主の心理も時間と共に変化し、不動産会社の担当者との間にも微妙な変化が表れてきます。

売主の「1円でも高く売りたい」と言う心理は、当たり前なので誰も否定したり揶揄する事はできません。
なので、当初は高値で売出し価格を設定したいのはある程度いたし方ないのですが、実は、当初の売出し価格が非常に大事だと言う事を、ほとんどの売主が知らない事が、売却の長期化を招き、売主に想像以上のストレスを招く結果になります。
当初の売出し価格の設定に際しては、査定書を参考に不動産会社の担当者のアドバイスに謙虚に耳を傾け、冷静に相場を把握して決定する事をお薦めします。

それでは、前回のつづきをどうぞ

不動産会社の担当者「今日は、これまでの営業活動及び成果のご報告に参りました」

売主(ご主人)「よろしく」

売主(奥様)「よろしくお願いします」

不動産会社の担当者「ご自宅のご売却を受け賜わりまして、これまでの営業活動としましては、まず、➀レインズ登録(指定流通機構)に登録させていただきました。これは、不動産会社だけの流通システムでして全国に約12万7千の不動産会社の営業所が加盟しており、全国に情報発信できる流通システムです。なので、購入希望の買主が要る場合、直ぐに内覧依頼が入ります。それから、②当社の合同チラシ及び単品チラシによる新聞折り込みチラシの実施③大手不動産ポータルサイトへの掲載④当社ホームページへの掲載をさせていただきました。残念ながら、成果といたしましては、現状は何もありません」

売主(ご主人)「そうですか…残念」

売主(奥様)「買主がいないと言う事ですか?」

不動産会社の担当者「はい、買主がいないと言う事ではなく、今の条件では興味を引かないので反響が無いと言う事ですね」

営業担当者の心の声(だから言ったでしょ!不安になってくるでしょ!いくら人気物件だとは言え、相場より10%以上も高く売るなんて無理ですよ。買う方もちゃんと相場の勉強しているんだもの…)

売主(奥様)「でも、まだ1か月しか経っていないし5ヶ月もあるんだから、もう少し頑張ってくださいよ」

不動産会社の担当者(お気持ちは分かりますが、今の条件で継続しても残念ながらいい成果がでるとは考えられません。まずは、購入希望者に土俵に乗っていただく事が肝心です。まずは、見てもらわなければ話になりません。そして、そこからいろいろに条件の擦り合わせをし、契約にいたりますので、まずは、見ていただけるよう、条件を再考いただき早期に契約を成立させる方が、結果いろんな意味でいいですよ

売主(ご主人)「売出し価格を下げると言うことですか?。」

不動産会社の担当者「はい」

売主(奥様)「そんなに簡単に下げるなんて、納得できないわ!」

営業担当者の心の声(査定価格の10%以上も高く売るのは、さすがに無理ですよ…勘弁してください。だんだん苦しくなってくるのは売主さんなのに…!)

不動産会社の担当者「確かに新築の決済までは5ヶ月ありますが、こちらを買う方は高い確率で住宅ローンを利用されますので、契約し住宅ローンの申し込みから決済(住宅ローンの資金実行)まで2カ月はみておかなければなりません。それを考慮すると3か月以内に、買主を見つけなければなりません。あっと言う間ですよ…」

売主(ご主人)「どれくらい下げればいい?」

不動産会社の担当者「はい、1か月前にご提示させていただきました査定価格が3,400万円です。マンションの売却可能ゾーンは±5%と言われています。なので、上限は3,570万円と言う事になります。人気マンションなので下限はあまり考える必要はないと
思います。適正な売出し価格は3,580万円が適切と考えます」

売主(ご主人)「うむ…」

売主(奥様)「200万円も下げるなんて…考えられない」

営業担当者の心の声(3,580万円にして下さい。それなら、間違いなく直ぐに買主がつくのになぁ~!。しかも、両手取引できるかもしれないのになぁ~!)

売主(ご主人)「じゃぁ、100万円下げて3,680万円で、頑張ってください。」

売主(奥様)「そうね!。3,680万円ならいいわ」

営業担当者の心の声(ありゃ、中取られてしまった。買主付かなくても知らないからね)

買替の売主さんと不動産会社の担当者との、今も昔も変わらない現場での会話です。

つづく

まとめ

・当初の売出し価格が非常に大事だと言う事を、ほとんどの売主が知らない事が、売却の長期化を招き、想像以上のストレスを招く結果に成ります。
・当初の売出し価格の設定に際しては、査定書を参考に不動産会社の担当者のアドバイスに謙虚に耳を傾け、冷静に相場を把握して決定する事をお薦めします。
・相場の10%以上高く売るのは無理、通常は5%UPが上限

営業担当者の心の内・住まい売却編 第1回

こんにちは、佐海です。

「営業担当者の心の内」シリーズ前8回は、買主と不動産会社の営業担当者のやり取りを通して、営業担当者の心の内を覗いてみましたが、今回からはこのケースを真逆の立場の売主と不動産会社の営業担当者のやり取りを通して、営業担当者の心の内を覗いてみたいと思います。

このシリーズの売主は「子供が大きくなって手狭になったので、一戸建てに買替する」と言う買替が売却動機でした。
売却側の不動産会社は、分譲住宅(一戸建て住宅)の分譲会社の関連の不動産会社となります。

買替の場合、売却が長期化すると売主の心理も時間と共に変化し、不動産会社の担当者との間にも微妙な変化が表れてきます。

それでは、始まり始まり…。

不動産会社の担当者「この度は、○○○○ハウスの分譲一戸建て住宅をご契約いただきまして、ありがとうございました。今回の住宅は、お客様の希望を反映した注文住宅となりますので、お引渡し(決済)まで6か月ございます。時間は十分ありますが、いち早く良い買主をお世話できるよう一生懸命頑張りますので、宜しくお願いいたします」

売主(奥様)「よろしくお願いします」

売主(ご主人)「よろしく」

不動産会社の担当者「新築の担当者より概要はお伝えしていますが、査定の結果××様のご自宅の査定価格はこのようになりました」

●中略  担当者から査定書の詳細な説明を経て

売主(奥様)「やはり、3,400万円ですか…?とても納得できないわ」

不動産会社の担当者「ご説明の通り××様のご自宅と同じマンション内で3か月前に売却した成約事例が有りましたので比較検討の結果、3,400万円となりました。」

売主(奥様)「あのお部屋の奥さんとは、管理組合の役員が一緒で時々おじゃまして、お部屋の中もよく知っていたけど、子供さんのいたずらで随分お部屋の中が汚れていて、新しく買われた方がリフォーム費用がたくさんかかったらしいのでしかたないけど、うちは綺麗に住んでいるから全然ちがうと思うけど!」

営業担当者の心の声(確かに、わたしは直接その成約事例物件の取引をした張本人ではないので、成約事例物件の保守状態までは分からなけど、そもそも築後9年が経過したマンションのお部屋なので、住んでいる本人はあまり気にならなかったり分からないけど、買主の立場になればそれなりの汚れや経年劣化が目に付くものなんだがなぁ…。でも、売主さんにとってはそれは許せないんだよなぁ…。売主さんにとっては自宅に対する愛着もあり自分の自宅だけは、他のお部屋より高く売れると思っているし思いたいんだよなぁ…。しょうがないか、売主さんの気持ちを考えると1円でも高く売りたいかなぁ…)

不動産会社の担当者「××様のご希望の売り出し価格はおいくら位をお考えですか?」

売主(奥様)「このマンションはこの地域ではとても人気があり、きっといい買主さんがいると思うので¥3,700万円~3,800万円では売れると思います」

営業担当者の心の声(まったく、査定価格の10%以上も高く売るのは、さすがに無理と思いますよ…勘弁してほしいな。でも、はじめから売主との関係がギクシャクしてしまうと何かと今後の仕事がやりにくいからなぁ。しょうがないか!)

不動産会社の担当者「では、ご要望にお応え致しまして3,780万円で如何ですか…?」

売主(奥様)「そうですね…」

売主(ご主人)「そうだね、新しい家の支払いを考えると、それくらいで売れると助かるね…。それでお願いします」

不動産会社の担当者「はい、わかりました。ただ、万一このお部屋の売却が遅れますと「つなぎ融資」を使う事になり、かえって金利や諸費用など余計な費用の持ち出しとなりますので、かえって売却後の手残り金額が少なくなってしまいますので、スムーズな買替計画を考えますと、通常は査定価格の5%UPが上限と考えられます。このお部屋の場合、3,570万円が上限です。なので、市場に物件情報を出しても反応がかんばしくない場合は、売り出し価格の見直しをして下さい」

売主(ご主人)「わかりました」

売主(奥様)「大丈夫よ。まだ6か月もあるもの」

営業担当者の心の声(余裕があるのはいいけれど…大丈夫かなぁ~)

以上が買替の売主さんと不動産会社の担当者との、今も昔も変わらない現場での会話です。

つづく

まとめ

・買替の場合、売却が長期化すると売主の心理も時間と共に変化し、不動産会社の担当者との間にも微妙な変化が表れてきます。
・売主さんにとっては自宅に対する愛着もあり自分の自宅だけは、他の家より高く売れると思っているし思いたい。
・相場の10%以上高く売るのは無理、通常は5%UPが上限。

高く売りたい!安く買いたい!パート2

結局「査定書」の意味とはなんだったんでしょう?
「査定書」の査定価格が2,000万円の場合、不動産会社はこの物件の売却可能価格は2,000万円ですよと「売主さん」に提示している訳です。

実は、「売主さん」の気持ちを忖度しつつ上手く利用して物件確保する不動産会社の担当者の抜け目ないのが凄いところで、自分から2,300万円と言って物件確保すると、当然相場よりも高くて売れない訳です。
そうした売れない時には、その責めを売主さんから受けかねないのですが、売主さんから2,300万円と言ってもらえば「売主さんの要望に応えた」と言う大義名分ができます。
その場合、売主さんの信頼を勝ち取ることに成功している不動産会社の担当者としては、2,300万円で売れなかったとしても、その後の二次情報(*1)になった場合に両手取引の大きなビジネスチャンスにつながりますので、まずは物件確保ができ一安心というわけです。

(*1)二次情報
初回の売り出し価格で売却する事ができず値下げして売りに出す「値下げ情報」です。不動産会社にとっては両手取引を実現できる可能性の高いとても魅力のある情報です。
また、買主にとっても魅力のある情報の場合が多いです。

これは売主さんが悪い訳でもなく不動産会社の担当者が悪い訳でもないのです。
売主さんは一縷の望みをかけて高値から出したいのが人情で、要望に応えようとする不動産会社の担当者はなんら違法行為をしている訳でもないからです。

ただし、こうした結果、売主さんはなかなか家を売却できず、ストレスが溜まり胃が悪くなり貴重な時間を無駄遣いする事になります。一方、不動産会社も売れないのを百も承知で形だけの広告活動をし、無駄な時間と広告経費を使い収益率を下げることになり、もはや何が何だかよく分かりません。
非生産的ですね!

もっとも昨今では、「高く売れます」などのキャッチコピーで売主さんの関心を引き、利用させようとする「査定サイト」が氾濫しているようです。
本当にそんなことができるのか佐海さんの記事を読んでいただければ答えお分かりになると思います。

さて一方買主さんは、当然自分の希望に近いであろう物件情報を不動産会社さんから提供を受け、その中からいくつか良さそうな物件を内覧し、その中で一番良かったと思える物件を見た時に不動産会社から「早く決めないと売れてしまいますよ。」などと煽りを入れられる訳です。
そんなことは百も承知の買主さんは少しでも安くすることができないものかと、気に入った購入しようと思っている物件の粗探しをして、少しでも値段交渉を有利にしたいと考えています。

買主さん「先ほど内覧した××邸どれくらいまで値段下がりますか?」

買主さんが値段のことを聞いてくると言うことは、物件に関心があると言う事を十分に分かっている不動産会社の担当者は、以下のような受け答えをし、やんわりと値段はそんなに下がらないことをにじませつつ煽りを入れます。

不動産会社の担当者
「××邸はいい物件ですよ丁寧にお住いですし値段もお手頃な価格なのですぐに売れてしまうと思います」

買主さん
「でも、お風呂に浴室乾燥機も付いていないし、お台所の流し台も食洗器が付いてなったので、私たちが買うとしたら全てリフォームするので相当費用がかかりそう」

確かに、そのことは事実ですがお風呂も流し台もまだまだ十二分に使えるもの、リフォームするのは買主さんの自由で、それを売主さんに持って行ってもしょうがないくらい、これまた十二分に分かっていながら、さらりと言うことにより値段交渉してほしいという自分達の意向を担当者に伝える買主さんの高等テクニックです。

その後、不動産会社の事務所にもどりゆっくりと話し合い、買主さんの購入意思を確認後、担当者のお決まりの「セリフ」が炸裂します。

不動産会社の担当者
「では『買い付け申込書』を書いていただけますか。売主さんに失礼のないように書面で購入の意思をお伝えし、価格を含め△△様(買主さん)の購入希望条件を売主さんにご検討していただきます」

こんな具合です。

パート1からお話ししてきた売主・買主さん両者の話(心理)はごくごく当たり前、痛いほどわかる話です。
ここで不動産会社の担当者が毅然とした態度で自分が調査作成した「査定書」の正当性を主張し早期に売却できる妥当な価格(値付け)を提示できれば、もっと売主さんのためになるスムーズな売却ができ、買主さんも自分が購入したい物件に対して粗探しをしなくてもよく、不動産会社も無駄な時間や広告経費を使わなくて済み三方よしなのですが、それが出来ないのが現場の担当者の辛いところです。
かくいう佐海のおっちゃんも、両目をつむって何度も売主さんの顔色を見て物件確保してきました。

そもそもネット時代になった今日、三方よしになるネットのサービスはないのでしょうか!?

次回は、シリーズの話題の原点に戻って不動産の相場の話をしたいと思います。

高く売りたい!安く買いたい!パート1

さてこのシリーズでは、みなさんが一番興味をお持ちであろう不動産の相場「価格」についてお話しいたします。
ここでは大都市(都心部)の居住用不動産の中古物件「住まい」に限定してお話しを進めさせていただきます。

当たり前の話ですが「売主さん」は1円でも高く売りたい「買主さん」は1円でも安く買いたいと思うのが人情です。

売主・買主さんは真逆の立場なのでいたしかた無いのですが、特に佐海さんが長年お世話になりました関西の「売主さん」「買主さん」はその立場の違いが特に分かりやすく、お客様心理の勉強になりました。

売主さんは不動産会社に依頼(媒介契約)し市場に売りに出す際の価格(通称:値付け)を決めて市場に出すことになるのですが、その際、不動産会社が事前に調査作成した「査定書」(*1)を参考に不動産会社の担当者と相談して決める事になるのですがそこで興味深い会話になります。

(*1)「査定書」
不動産会社が作成する不動産査定書は、個人が不動産を売却する際に、売出し価格の参考とする目的で取得します。一般に査定価格は、当該価格で売り出した場合には、3ヶ月以内で売却可能と判断される価格です。

こんな具合です。

不動産会社の担当者
「この度は、数ある不動産会社の中から私ども〇〇〇不動産に、大切なご自宅の査定をご依頼いただきまして誠にありがとうございました。」

売主さん「宜しくお願いします」

不動産会社の担当者「早速ですが、査定の結果××様のご自宅の査定価格はこのようになりました。」

担当者から査定書の詳細な説明を経て…

売主さん「2,000万円ですか!?」

不動産会社の担当者
「はい、ちょうど××様のご自宅と同じマンション内で2か月前に売却した成約事例(*2)が有りましたので比較検討の結果、2,000万円となりました。」

(*2)成約事例
不動産会社が作成する不動産査定書は、査定をする物件に対して出来るだけ直近の類似の成約済(売買契約の完了した事例)の成約物件との比較により数値化し査定価格を導き出すための物件が、成約物件であり成約事例と言います。

売主さん
「あのお部屋の奥さんとはお友達で時々おじゃましてよく知ってたけど、入居後一回もリフォームしてなかったので新しく買いはった人がリフォーム費用がたくさんかかったからしょうがないけど、うちは8年前にお風呂(ユニットバス)入れ替えているしリビングのクロスも張り替えて綺麗に住んでいるから全然ちがうと思うけど!」

確かに、不動産会社の担当者は直接その成約事例物件の取引をした張本人でない限り、成約事例物件の保守状態までは分からないのですが、今回の査定物件も8年前のお風呂(ユニットバス)の入れ替えやクロスの張替なので残念ながら大きく査定価格には反映できないのも事実です。
しかし、売主さんにとってはそれは許せないのです。
売主さんにとっては自宅に対する愛着もあり自分の自宅だけは他のお部屋より高く売れると思っているし思いたいのです。

それは、不動産会社の担当者としても売主さんの気持ちとして察するに余りあるほど分かるので、この様な会話がつづく訳です。

不動産会社の担当者
「××様のご希望の売り出し価格はおいくら位をお考えですか?。」

売主さん
「このマンションはこの地域ではとても人気がありきっといい買主さんがいると思うので、2,300万円で売れると思います」

これを聞いた不動産会社の担当者は内心では、査定価格の15%も高く売るのはさすがに無理と思いつつも、ここでそれを否定し査定価格に近い売り出し価格を提案してしまうと売主さんのご機嫌を損ない他の不動産会社に仕事を持って行かれるので…

不動産会社の担当者
「なるほど、では2,380万円でいかがですか?ご期待にお答え出来るよう一生懸命頑張りますので、私にお任せくださいますか」

売主さん「はい、ではよろしくお願いいたします」

以上が、売主さんと不動産会社の担当者との今も昔も変わらない現場での会話です。

次回のパート2で、この後売主さんがどうなるかと、今度は買主さんの立場から見てみましょう。